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【第四話】ラストピースは突然に

by
ハリス漆原
ハリス漆原
その時は、前触れもなく突然訪れた。その日は朝から一畳城の築城用部材があちらこちらから届く手はずになっている日であった。新居に唯一の私だけの城。予算が許す限り、城を居心地よく・効率的で・生産性高く、と考えたのはきっと戦国時代の武将達と同じであったに違いない。令和3年、戦国時代に思いを馳せた。

マンションのインターホンが鳴る。ヤマト運輸の制服が見えた。玄関のインターホンが鳴る。 うすら笑いを浮かべるヤマト運輸の配達員から着払いの配送料を請求された。通常、amazonや楽天から荷物が届く場合は段ボールなどに梱包されているのが常だが、それは全く違っていた。配達員が小脇に抱える箱は天を衝くほどに青く、新雪の如く純白の文字でPS4と書かれていた。つまりPS4の箱の真ん中に宅配伝票がそのまま貼られているスタイルだ。箱上部の開口部には嘘偽りなく透明なテープが貼られているだけで、出品者のヤマト運輸に対する絶大なる信頼を感じさせるには十分だった。

そんなことはお構いなしに、そそくさと城に運び入れる。一畳城のデスクの上にあった細かな築城用部材を片腕で薙ぎ払い、届いた青き箱を置いてみる。小声が漏れた。

「これか」

貪るように中の本体を取り出し、しかるべき穴からしかるべき穴へ、しかるべきケーブルを繋ぎ電源ボタンを押す。電源ボタンどこ?

いかにもセットアップ的な雰囲気の青い画面が表示される。出品者の話しでは初期化済みとのことだったので、色々と設定しないといけないのであろう。 付属の純正コントローラーには目もくれず、迷いなくアケコンをぶっ刺した。 しかし初期設定を進めようにも、うんともすんとも動かない。ふと、アケコン側の切替スイッチがPS3になっていることに気付く。

「ふふ」

焦っていた自分を鼻で笑いながら、アケコンのスイッチをPS4に切り替える。うんともすんとも動かない。一生使う必要はないなと思い、青き箱に置き去りだった純正コントローラーを繋いでみる。ここで動かない、はVFesリリース日にプレイができない、を意味する。それはほとんど死に体だ。そんな不安を掻き消すかのように純正コントローラーでの操作は快調だった。

その後も8年前に設定したPlayStation®Networkのパスワードを1発で引き当てる神業を披露しながら、ついにPS4のログインに成功する。記念すべきファーストログインの瞬間なのだが、見覚えのあるアイコンと名前がまず目に入った。穴子である。PlayStation®Networkはハードに関わらずフレンドを横断的に引き継げるようだ。"穴子"のアイコンを見て、図らずも安堵してしまった自分に驚きつつも、その安堵感からかその日はそっとPS4を閉じた。

決してPSnowとかPSplusの意味がよくわからずに、面倒になったからではない。あやつら一体何者ぞ?

更新日時:2021/10/02 11:23
(作成日時:2021/05/31 19:07)
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日記
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