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攻めるとはなんなのか

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kan
kan
かれこれ10年ほど前のことです。
わたしはとある巨大な大会に参加するため上京し、ここぞとばかりにゲセンその他にて対戦三昧を繰り広げており
なんやかんやあって相手をしてくださった上級者の皆さんに指導を賜ったりしていたのでした。
以下それらいただいたアドバイスの具体的なやつ抜粋。

武帝クラスAさん「最速で動けてないですね」
武帝クラスBさん「派生にビビり過ぎですガードしたらちゃんと中段か投げ撃ちましょう」
神クラスCさん「まずせめて自分から作った有利は丁寧に二択を」
神クラスHさん「避けても投げがないからそりゃ勝てないですわ」
神クラスYさん「なんで今その技出したんですか?説明できないでしょ?​​​​​​」



どうです?
こわいでしょう?

当時を思い返すと今でもちょっと胃がキュッとなります。

さておきその内容について。まずAさんBさんCさんの言っていることは同じです。
有利取ってるんだから最速で二択をかけましょうとまあいつもどおりのフレーズ。
Hさんのお話にしても避けて有利取ってるのに打撃だけだから二択になってない、とこれまた同じ内容です。

総じて言うと、「最速二択がないからお前の攻めは怖くない」という結論で間違いなかっただろうと思います。

しかしとなるとじゃあ怖い攻めってなんだよ、みたいな話になってくるわけで、
言葉でそれを説明する前に手っ取り早くこの動画を見ていただきたく思いますジェフリー視点を念頭に置いてはいどーん
 
言うなればこちらは「怖くない攻め」の一例です。
全て同じ対応をされても最速の投げには100、遅らせ投げには120、遅らせた膝には140のリスクがあるというわけですね。
少々乱暴な結論ではありますが、この中では最速の投げが最もローリスクであったことは間違いありません。
投げにしろ打撃にしろ、遅らせたことが相手のアドバンテージに繋がってしまったケースとも言えます。

まあ動画はインパクト重視なのでこんな感じですが(そもそも+5なので最速二択は屈伸で回避可能)、
これがしゃがダ鉄山ではなくカウンターでコンボ始動となる技、例えば影の揚撃を用いた最速暴れであればどうなるか。

・最速投げ→硬化カウンターでダメージ25、フレームは-3。屈伸可。
・遅らせた打撃、投げ→どちらもカウンターで食らいダメージ70程度、+ダウン攻撃、もしくは受身攻めを受ける。

リスクリターンの比較で言うとこちらの方がわかりやすくなっているのではないでしょうか。
何気に盲点となりやすいのが「有利を背負っていればカウンターで食らうことはない」という点。このゲームはそれだけでかなり低リスク。
この点を踏まえ、投げに対してもまとまったダメージを取れるノーマルヒット始動でもコンボに行ける技で暴れてくるかどうか、
といった要素が攻める側としては投げと打撃の割合を決めるにあたっての判断基準になってきます。

そして、当然ながら動画の場面でジェフリーが最速中段、中でも例えばトーキックを出していれば赤く刺さり半分以上のダメージに。
でなくとも肘なり4Kなり適当な中段をチョイスしておくだけで、少なくとも潜り鉄山を狙う旨味はなくなりますね。
それを相手に自覚させるだけで、用意されていた手札を一枚減らせることにも繋がります。

つまり遅らせることで有利と不利が裏返ってしまうのが上記動画の要点で、それ自体本末転倒になりかねないのもそうなんですが、
なにより自分のターンを一度結果的に放棄したことで読み合いの回数が増えてしまう、かつ複雑になるのがよろしくありません。
ゆえに最速行動で、

・不必要なダメージを負わないようリスクを抑えつつ、
・相手の行動を観察すると同時に選択肢を狭められるような技を選び、
・癖や偏りを見つけたらそれに狙いを絞って最大リターンを取りに行く

というプロセスを実行できるようになるのが理想的でありセオリーでもあると。

特に初見の相手との対戦で下手に遅らせから入ったりすると、デカい暴れ二発食らって1ラウンド終了、
そのまま頭を切り替えることもできず勢いに流されるまま3本取られて対戦から学べたことも特に思い当たらず
みたいなことがとてもよくありますので、まず最速の攻防で手札を探り合うのはとても重要。名刺交換みたいなもん。

しかしとはいえ遅らせが不必要というわけでは決してなく、
「アドバンテージを手放した上でリターンを取りに行く行動である」
ことを理解しておくのが大事だということですね。
これを分かった上でそうするのと、分からないまま行うのとではまったく違います。


以上が最速行動を基本とすべき理由となります。
そして話題の行方はYさんへ。

これを言われたのは確か受身攻め出来るところでPを置いたりKキャンでフェイントかけたりとかやってた対戦中だったんですが、
その状況がもうほんとマジで一勝もできなくてすでに数十連敗重ねちゃってるしでそりゃ見てる方も何か言いたくなるのも当然で、
だけど超上級者のみなさんに囲まれた環境でアレな空気と視線に怯えちゃうのも仕方ないですよね、仕方なくないですか?
みたいな心境に陥っておりましてとても消えてなくなりたかったです。

Yさんとしてはそんなことするくらいならちゃんと二択かけましょ?的なことを言っていただけだと思います。
ただ自分としては、でもさっきからデカいコンボ始動食らってばっかりだしローリスクな小技を振る選択もなくはないのでは?とか、
投げもしゃがまれてるから立たせるのにKキャンは常套手段じゃ?それに上級者もこういうのよくやってませんか?
などと、その場で反論はできずとも内心若干納得いかない感じになっていたのでした。

あれから10年。今ならわかります。
あの時の自分はP振った後のことも考えてないしKキャンで立たせるための前フリもまるで仕込んでいませんでした。
どの行動もその場限りのものでしかなく、Pが相手に触れたら続くのは手癖のリモン、触れさえしてなかったらそこでもう相手のターンに。
Kキャンの方にしても相手が立ち上がるだけのリスクを負わせられていなかったのでずっとしゃがんでいればいいだけだと。

要するにP振った後の行動が普段と変わらないなら最初からリモン出していた方がなんぼかマシだし、
立たせるためにフェイントを使うなら例えばぼっしゃにある程度まとまったダメージを取れる中段を当てるなど予めしとかなきゃ、

というような考えがまったく頭になかったんですね当時の自分。

もっと言うと「Pを出すから暴れて潰されてくれ」「Kキャンするから立って投げられてくれ」みたいな思考だったような気がする。
そんなお願いしてないでちゃんと行動でわからせなきゃならないというのに。
このような「行動を読んでいるつもりのお願い」を読み合いだと思ってしまう勘違いにはおそらく誰しも一度は陥るものかと思います。
実際のところは「そうせざるを得なくなるよう行動を仕向ける」のが読み合いの本質としては正しいはずです。

自分なりに二手三手先を見据えたつもりでいても、そこへ至るまでに何の布石も打てていないのであれば、
たぶん相手はこう動くだろう、もしくはそうなってくれれば都合がいい、という一方的な願望でしかありません。
そんな駆け引きにもなっていない回りくどいだけの押しつけをするくらいなら、
ダメージに直結する行動を最短で行うことこそが相手にとっては何よりの揺さぶりとなるのだと。

たぶん足りなかったのはそういう認識だったんだろうなあ、と思います。

結局はYさんのお話も「お前の攻めは怖くない」とそれまでに言われていたのと同じものだったんですね。
ローリスクを意識するあまり相手にリスクを負わせることを放棄してしまっていた、しかもやってることは別にローリスクでもないという…
じゃあその時自分はどうすべきだったかを具体的に考えてみると、

・受身から大きな暴れがあるなら直接リターンを取れるヤクホを刺しに行き続けるべきだった。
割に合わなくなった相手がヤクホを恐れて暴れなくなってから初めて行動を変える検討をすればいい。
・Kキャンを使う前にぼっしゃ読みで馬歩やカクダをもっと撃っておく必要があった。リモン当てて更に太い二択とかでも良かったかも。
今ならコボクでデカい一発狙ったりとかもするけど当時のレベルだと微妙かな…

こんな感じかなと10年後の自分は思います。
でもまあ有効な布石を打つことも打った布石を後の攻めに生かすのも当時の自分にはハードル高かった気がするので、
やっぱり最速の投げとヤクホをひたすら擦り続けてそこに足すべきものを周りが教えてくれるまで待つべきだったかもなあ…

ひとつ断っておくと、間違っていたのは選択肢そのものではなく身の丈に合わない思考と行動を取っていた自分であって、
狙いのはっきりしているKキャンは言わずもがな、Pを置くところから始める攻めもそこからダメージを取りに行くプランがあるのなら
ダメな選択肢ということもおそらくありません。ただしそのビジョンがない、あるいは相手の行動に適したものが用意できないのならば
それは10年前の自分と同じです。そして、残念ながら現在の自分の腕前でもその選択肢は取るべきではないと思いますね。


では「攻めるとはなんなのか」のまとめを。

・攻める側としては一回の読み合いをなるべくシンプルに、かつ読み合う回数自体は減らすことを目指していく
・そのために確反のない範囲で一度に取れるダメージができるだけ大きくなる技の選択と、コンボ始動であればレシピのチョイス
・フレーム通りの攻防はダメージを取りにいくだけでなく、相手の選択肢を狭めるための布石が目的でもあることを認識する
・自分本位なだけの「お願い」ではなく相手をこちらの行動に付き合わせる「読み合い」を仕掛ける


これらを一言にすれば「怖い攻め」となるんじゃないかな、と思う2022年夏。


今回はここまで。
攻めの話はしたから次は守りかな、投げの話を先にした方がいいような気もするし
読みとか技術と手癖のあれこれもどっかで挟まないとたぶん何かしらよろしくなさそう。
更新日時:2022/07/31 14:17
(作成日時:2022/07/30 16:18)
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