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リスク、リターンとはなんなのか

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kan
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前回の記事では攻防をコントロールするために用いる読み合いの手法について述べました。
「ダメージの大きさで相手をわからせよう」と言うのが大まかな趣旨でしたが、今回はそこからもう少し踏み込んだ内容ですね。
数ある手札の中からなぜ今それを選ぶのか、その根拠や基準の設け方について表題の件に触れつつ書いてみたいと思います。
前回と同じく2Pを起点とした場面における守り方を例とすべく、まずはこちらの動画を。
 
屈伸可能フレームにて行う対応をいくつか抜粋してみました。どれにもメリット、デメリットがそれぞれ。
まず最初の三つは投げ読みの暴れですね。一つ一つ解説を入れていきますと、

・1Pは1コマンドであることが最大の利点で、加えてPK等よりも大きめのダメージを与えることが可能、
かつ上段スカし性能への期待もあり、さらには壁近くであれば白虎での追撃も期待できたりもします。
・崩撃はレバー入力すら必要ないボタンのみの1コマンドであることが大きな利点です。
そして体重問わずまとまったダメージを与えられるのも特に対重量級において有効に働く点です。
・33Pは完全にダメージ一点主義。運びもあるため壁、リングアウトなども狙えたりで期待値が非常に大きな選択肢です。

これらは当然ながら全て相手の打撃には負けてしまうわけでそれが最大のデメリットとなります。
その際食らったのが肘クラスならまだマシですが膝でも飛んできた日には以降暴れる気になどなれません。
ゆえに、「暴れ」は個々のメリットよりも先にそれ自体がハイリスクであることを踏まえる必要があります

そしてここのリスクは基準が相手側にあるという点も重要な判断基準となります。
例えば2Pから撃たれる中段が肘のみならばリスクは低く、しっかりコンボ始動があるならリスクは高い、といった具合。
つまり、暴れるかどうかにあたって考えるべくは相手による部分が大きいわけですね。
前回のようにとっさに出てくる打撃が2Pばかりならダメージ重視の暴れで問題ありません。
それ以外でも、そもそも投げが多い相手にならば大きな暴れを通せば最終的に効率勝ちすることが可能だったりもするわけで、
であれば読み勝つ回数よりも一回当たりのダメージ効率を求めた方が合理的であると言えます。
以上のことから「暴れ」はリスクリターンを相手依存で考える選択肢であると定義することができます。

次の三つは屈伸から反撃を決めていく形。

・投げは最も発生が早く確定させやすい反面、抜けられるリスクが付きまといます。
・PKは打撃の中で最速。得られるダメージは大きくありませんが確実性を取るならこれ。
・鉄山靠はただの投げ一点読みですね。ひたすら最大リターンのみを求めた選択肢です。

最後は例外ですが、こちらは暴れとは違い投げスカを目視してから確定を決めるのが基本であって、
それゆえに用いる打撃は発生が早いに越したことはなく、あとは自分の反応や技量との相談となります。
やっていることは屈伸からの確定反撃を一連の動きとしたセットプレイなわけで、
暴れのように相手の傾向、癖などを読む必要はありません。ゆえに練習もトレモで事足ります。
出されたのが打撃ならばガードしつつ、投げに反応できたら反撃を返すという確認のワンクッションがあるため、
暴れとは反対にリスクの基準が自分側にあるテクニックだと言えるでしょう。
相手の最速の動きはあまり問わないがゆえに、データの少ない初見の相手、また人読みが通じにくい相手などにも有効です。
つまり、「屈伸」はリスクリターンを自分基準で考える選択肢であると定義されます。


不利小からの選択肢を例に挙げたためにこのようなお話となりましたが、
様々な場面でこのような対比は生まれ、その時取れる行動からまた同様に考えることになります。
時にはステージやそれに伴う位置関係を考慮する必要が出てきたりもして、より複雑な判断を迫られることもあったりで、
しかしどの状況においても「オフェンシブな行動は相手を、ディフェンシブな行動は自分を基準に」が原則となります。
攻めは相手に合わせ、守りは相手に付き合わないと言い換えてもいいかもしれません。


実際の運用においては、動画のように目的に応じた手札をいくつも用意する必要性は高くありません。
選択肢の目的が投げにリスクを負わせることであり、それ以外のメリットは通常の読み合いから外れたところにあるからです。
なので暴れであれば、難しく考えずダメージ重視の可能な限り大きなワンコマンド打撃をまずは一つ出来るように。
屈伸からの反撃は、反応できたときに無理に打撃を決めようとはせずにまずはP+Gを押せるように。
そしてこんな程度のものであっても、完璧にこなせる人などどれだけの上級者であろうと存在しません。
なにせ、リスクリターンを考える以前にとっさの場面における最速行動自体がとても難しいものなので。
だからこそ読みが通った時のリターンは大きく、そして確定を逃すことのないような技選択を。
他の場面でも言えることですが、出来ることを増やすよりも、今やれることの精度を上げることこそが肝要です。


けどそんなこと言ったって強い人見てたら投げスカにPKとか標準装備でしょ?
なんなら見てから膝とか決められちゃったりで暴れる必要なんかなかったりするんじゃないの?
それくらいできなきゃ超煌神とかなれないんじゃないの~?
とか思いますよね?ぼくだってそう思います。そんな人たちに勝てるわけがありません…

なので調べてみました!

・赤丹(あかに) しわぽ@shiwaponkun選手にお話を聞いてみました。
ディフェンスと言えばこの人、攻め有利のVFesにおいては珍しいタイプのスタイルを誇る方ですね。
ただでさえ装甲の薄い軽量級使いでそれを感じさせないあの堅さをなんで維持できるのか。

記事の内容を踏まえ、今回は二つの質問をしてみました。
トップレベルの守備特化型プレイヤーはどのような考え方で動いているのでしょうか。

Q1.実戦において屈伸から投げスカにPKはどれくらいの確率で決められますか?
A1.オフで集中してるときはほぼミスらなかったレベルですが最近だと7割くらいですかね。

Q2.同じ状況で決めるのが膝クラスの打撃の場合はどれくらいの精度でこなせそうですか?
A2.あまりそういった狙いをしないのでちょっとわからないです…(が、それでもやるとしたら)ほぼ一点読みなので、
スカったのが投げじゃなくPとかでも出ちゃうような、通称「匂い」入れ込みに近くなってしまいますね。

との回答を頂きました。
まず「ほぼミスらなかった」ってなんだよ…とおののきましたが、この言い方だと現在のオンでも7割って事だよね…
しかしそれでも7割程度、と言ってしまってもいいのかもしれません。
膝クラスの打撃になると、狙ってやれるほどの精度は期待できない、ということになるでしょうか。
それでもしわぽ選手の試合を見ていると、投げをしゃがんで相手の顎カチ上げてる光景を割と見かける気もしますが、
あるいはそれだけのインパクトを残せる場面で当てている、ということの裏返しでもあるのかもしれないですね。

そして頂いた回答からの延長で気になった点を聞いてみることに。
Q2のような一点読みはあまりしない、というのは「ゲーム的にここで膝クラス狙いは割に合わない」なのか、
それとも「単に自分のプレイスタイルに合わない」のかどうなんでしょうか?という問いには、
「パイだからというのはあるかもしれないですね。相撲なら4P+Kを匂いで打ちつつ、当たったら繋げるとかはやりそうですね」
との返答。確かにそこらへんキャラの個性を活かしたりで何かしら違う手もありそうな話です。
「でも自分は最後までもじもじファジーしてPK返してそうですね。そこはプレイヤーの思考でも色々変わりそうかなと」

以上、赤丹しわぽ選手でした。ご回答ありがとうございました。


なるほど…ふむ…プレイヤーの思考…

というわけでタイプの違う別の方にもお声がけしてみました!

・とんちゃん@tonchan1456選手にお話を聞いてみました。
オフェンスと言えばこの人、コンボの精度高すぎどっからでも壁に持っていきすぎの超攻撃型プレイヤー。
とは言え当然ながらディフェンスも一級品、よろけ回復早すぎてサラ使いは泣いてるぞ!

こちらにも同じ質問をしてみました。

Q1.実戦において屈伸から投げスカにPKはどれくらいの確率で決められますか?
A1.読みや相手キャラにもよりますし、Pを返す事よりも確実に投げを確定させる方を意識してるので確率と言うと難しいですね。
調子いい時、意識配分ができてる時や軽量Pなら7〜8割は返せると思います。

Q2.同じ状況で決めるのが膝クラスの打撃の場合はどれくらいの精度でこなせそうですか?
A2.膝は正直入れ込まないと無理なので、33打撃入れ込みは上段読みでたまにやる程度ですね!

とのお返事を頂きました。この時点で回答に隙が無さすぎる…
PK成功率7~8割とな…ただ「意識配分」次第でもあると。これは本質的な部分で反応よりも重要な点だと言えそうです。
膝クラスはやはり入れ込まないと無理だそう。よかったな!見てから膝は迷信だぞ!出来ると言う奴はぜひ表舞台にカモン!

少し意外だったのは「確実に投げを確定させる方を意識してる」という点。
投げ抜けのリスクを天秤にかけてもより発生が早く、よりダメージを見込める可能性のある投げを優先していると。
実際の試合を見てみると、とんちゃん選手の場合P+Gだけでなくしっかりニーストを決めていたりもします。
それを踏まえれば抜けのリスクを考慮してもダメージ効率的には許容範囲になる、ということではないかと思います。

このへん一回当たりの読み合いを大きく取りに行く攻撃的なスタンスが垣間見えるところですね。
自分はおそらく一生ファジーからPKを決めてそう、と言うしわぽ選手と対照的で非常に興味深いです。

以上、とんちゃん選手でした、ご回答ありがとうございました。


正直どちらも真似をするには一般プレイヤーにはちょっと無理がありすぎんだろいろいろ、としか思えませんでしたが、
しかし考え方のベースには特異な点などなく、取捨選択の仕方についてはとても参考になるのではと感じます。
一方は読み合いの回数が増えることを厭わずローリスクかつ確実性をひたすら突き詰めており、
もう一方は一定のリスクを許容した上で一回あたりのダメージ効率を求めている、ある意味わかりやすい結論です。
また、このレベルにおいても完璧はなく、それゆえに自分の持ち味を伸ばすことを重要視しているところは注目すべき点です。
自分の出来ること、またそれらの手札を運用する処理能力と向き合うことがその第一歩と言えるのではないでしょうか。


というわけで今回はここまで。「リスク、リターンとはなんなのか」でした。
読み返すとインタビューだけでよかったのでは…?なんか回答部分だけで言いたいこと大体まとまってたし…
次回は補足と言うか何かしら今回の延長線上のお話を書くことになりそうな気がしています。

最後に赤丹しわぽ選手、とんちゃん選手のお二人に改めてお礼を。
お時間頂き誠にありがとうございました。今後ますますのご活躍を期待しております。
更新日時:2022/11/06 14:23
(作成日時:2022/11/04 03:25)
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